無意識は千秋のテッパンネタですから!
「千秋ー、動くなって」
「いや、動かなきゃ食えないだろ!」
さっきから柳瀬は食事をしている吉野をスケッチしていた。
昔からずっと俺をモデルにしていい加減飽きないのだろう?告白を断ってからも一応友達って関係が続いてて嬉しいけど、じっと見られているとやっぱ少し落ち着かない。
「最近ずっと千秋描いてなかったからさ、仕事がはかどらなくて」
「なんだよそれっ」
つい吹きだしそうになってしまうが・・・笑えない、いや、笑ったら殺される。
いや、ほんとね。わかりますよ・・・気持ちはわかりますけど、頼むからそんなに睨むなよトリ!!
先ほどからずっと皿を洗っている羽鳥は、吉野と柳瀬が話しているのを見てずっとイライラしていた。眉間にシワを深く刻んでいるが、まぁ柳瀬が気にするわけもなく。
「・・・ご、ごちそうさま」
吉野ばっかが心配していた。
とばっちり食らうのは俺なんだよ。
「っあ、食い終わった?じゃあ俺帰るわ」
「あれ、もう帰るの?」
今は仕事もあまりないはずなのに、優にしてはめずらしい。
「なんか中島先生が他の所で読み切り描くらしくてさ。それで手伝ってくれって。っあ、ちゃんと千秋のスケジュールは空けといたから」
「うん、ありがとな」
ほんと優に来てもらわないと俺の原稿上がらないからなぁ。
「それに、こんな横でイライラしたやつがいると落ち着かなくてね。じゃ」
「イライラしててわるかったな」
最後に爆弾を置いて柳瀬は帰っていった。
・・・・・・気まずい。
「・・・・・・えっとー、今日の卵焼き一段とおいしかったぞ!」
「・・・・・そうか」
・・・重いっ。重すぎる!
ていうかそんなに怒んなくてもいいじゃんか。
「・・・怒ってる?」
「・・・・・・別に、イラついているだけだ」
一般にそれを怒ってるというと思うんだが。
「絵描いてただけなんだからさ。そんな怒んなくても・・・」
「だから怒ってはない。ただ、あの中にお前の絵があると考えると・・・ムカつくだけだ」
返す言葉が見つからず、沈黙が流れる。
でも優は絵描いてる時楽しそうで邪魔できないし、・・・はぁー。
そういえば俺もよく昔スケッチブックに絵描いてたっけ。最近はもっぱららくがきか、マンガ描くぐらいだからなぁ。
「・・・俺のスケッチブックどこだっけ?」
「え?」
なんか無性に描きたくなってきた。
吉野は立ち上がり仕事場へ入っていく。確かどこかにしまったはずだが・・・。
「どこだっけなぁ」
「そこの押し入れじゃないのか?」
「ここ?」
奥の扉を開け、あさっていると山済みになったノートやスケッチブックが見つかった。
「あったあった!わぁ懐かしい」
「で、何でわざわざそんなもん取り出してるんだ?」
壁にもたれかかりながら聞いてくる。
「なんか、久しぶりに描きたくなったし、この時どんな絵描いてたか気になってさ」
「わざわざそれに描かなくてもいいじゃないか?」
不思議そうに聞いてきた。
「スケッチブックっていうのは、いつの間にか自分の好きなもので溢れていくもんなんだって。後で見返すと、まるでアルバムみたいなんだよ」
俺もよく近所のネコとか、好きなマンガの絵描いてたっけ。
「・・・じゃあ柳瀬は大好きなお前で溢れてるってわけか・・・やはりムカつく」
「へ?・・・そういう意味で言ったわけじゃねーよ!!」
ほんと優の事となるとしつけーんだから。
そんな羽鳥を無視して、リビングのソファに座る。
「えーっと、高校の時のか・・・。この頃何描いてたっけ?」
ページをめくっていく。
一枚、また一枚。
突然吉野は数秒間固まり、顔を真っ赤にしながらいきよいよく閉めた。
「・・どうしたんだ?昔のテストでも挟まってたか」
「え!?いや、あっうん。そうなんだよ。はは、びびったぁー」
わかりやすく動揺した吉野は、すばやくスケッチブックを後ろに隠した。
「・・・なぜ隠す」
「べっ別に」
「見せてみろ」
羽鳥は無理やり吉野の手から奪い取り、高くあげる。
返せ!、と飛んでくるが、身長的に吉野はまったく届くわけ無く、顔を真っ赤にしながらで睨んできた。
・・・そんなに見られたくないのか?まさか柳瀬の絵がいっぱいあるとか。
自分で考えたことにへこみそうになりながらも、ゆっくりページをめくると。
「・・・・・・・・・俺?」
そこには制服姿の羽鳥が何ページにもわたって描かれていた。
耳まで真っ赤にして吉野は俯いてしまう。
でもさっきの言葉が蘇る。
『スケッチブックっていうのは、いつの間にか自分の好きなもので溢れていくもんなんだって』
「吉野、これって・・・」
「うるせー!きっと目の前にいつもいたから描いただけで、別に好きとかそんなんじゃ・・・」
今、吉野が俺に好意を抱いてくれているのはわかるが、・・・もしかしたら昔も、ほんと無意識に俺のことを好きだと思ってくれていたのなら。やばい、頬が緩んでしまう。
「うれしいよ」
「・・・・・・ん」
ほんの小さな思い出も、お前がいてくれるだけでこんなにも色鮮やかになっていく。
俺を描いていたときの吉野はどんな目をしていただろうか?そんな記憶のページもめくりながら、少しだけ思い出に浸ってしまった。
「これもらってもいいか?」
「別にいいけど・・・」
「それと、新しいスケッチブックでも買いに行くか?お前らくがきするのはいいが、紙ぐちゃぐちゃにするだろ」
「マジ!?行く!」
吉野は嬉しそうに顔を輝かせた。
あの頃と変わらない、俺の大好きな笑顔で。
fin
「いや、動かなきゃ食えないだろ!」
さっきから柳瀬は食事をしている吉野をスケッチしていた。
昔からずっと俺をモデルにしていい加減飽きないのだろう?告白を断ってからも一応友達って関係が続いてて嬉しいけど、じっと見られているとやっぱ少し落ち着かない。
「最近ずっと千秋描いてなかったからさ、仕事がはかどらなくて」
「なんだよそれっ」
つい吹きだしそうになってしまうが・・・笑えない、いや、笑ったら殺される。
いや、ほんとね。わかりますよ・・・気持ちはわかりますけど、頼むからそんなに睨むなよトリ!!
先ほどからずっと皿を洗っている羽鳥は、吉野と柳瀬が話しているのを見てずっとイライラしていた。眉間にシワを深く刻んでいるが、まぁ柳瀬が気にするわけもなく。
「・・・ご、ごちそうさま」
吉野ばっかが心配していた。
とばっちり食らうのは俺なんだよ。
「っあ、食い終わった?じゃあ俺帰るわ」
「あれ、もう帰るの?」
今は仕事もあまりないはずなのに、優にしてはめずらしい。
「なんか中島先生が他の所で読み切り描くらしくてさ。それで手伝ってくれって。っあ、ちゃんと千秋のスケジュールは空けといたから」
「うん、ありがとな」
ほんと優に来てもらわないと俺の原稿上がらないからなぁ。
「それに、こんな横でイライラしたやつがいると落ち着かなくてね。じゃ」
「イライラしててわるかったな」
最後に爆弾を置いて柳瀬は帰っていった。
・・・・・・気まずい。
「・・・・・・えっとー、今日の卵焼き一段とおいしかったぞ!」
「・・・・・そうか」
・・・重いっ。重すぎる!
ていうかそんなに怒んなくてもいいじゃんか。
「・・・怒ってる?」
「・・・・・・別に、イラついているだけだ」
一般にそれを怒ってるというと思うんだが。
「絵描いてただけなんだからさ。そんな怒んなくても・・・」
「だから怒ってはない。ただ、あの中にお前の絵があると考えると・・・ムカつくだけだ」
返す言葉が見つからず、沈黙が流れる。
でも優は絵描いてる時楽しそうで邪魔できないし、・・・はぁー。
そういえば俺もよく昔スケッチブックに絵描いてたっけ。最近はもっぱららくがきか、マンガ描くぐらいだからなぁ。
「・・・俺のスケッチブックどこだっけ?」
「え?」
なんか無性に描きたくなってきた。
吉野は立ち上がり仕事場へ入っていく。確かどこかにしまったはずだが・・・。
「どこだっけなぁ」
「そこの押し入れじゃないのか?」
「ここ?」
奥の扉を開け、あさっていると山済みになったノートやスケッチブックが見つかった。
「あったあった!わぁ懐かしい」
「で、何でわざわざそんなもん取り出してるんだ?」
壁にもたれかかりながら聞いてくる。
「なんか、久しぶりに描きたくなったし、この時どんな絵描いてたか気になってさ」
「わざわざそれに描かなくてもいいじゃないか?」
不思議そうに聞いてきた。
「スケッチブックっていうのは、いつの間にか自分の好きなもので溢れていくもんなんだって。後で見返すと、まるでアルバムみたいなんだよ」
俺もよく近所のネコとか、好きなマンガの絵描いてたっけ。
「・・・じゃあ柳瀬は大好きなお前で溢れてるってわけか・・・やはりムカつく」
「へ?・・・そういう意味で言ったわけじゃねーよ!!」
ほんと優の事となるとしつけーんだから。
そんな羽鳥を無視して、リビングのソファに座る。
「えーっと、高校の時のか・・・。この頃何描いてたっけ?」
ページをめくっていく。
一枚、また一枚。
突然吉野は数秒間固まり、顔を真っ赤にしながらいきよいよく閉めた。
「・・どうしたんだ?昔のテストでも挟まってたか」
「え!?いや、あっうん。そうなんだよ。はは、びびったぁー」
わかりやすく動揺した吉野は、すばやくスケッチブックを後ろに隠した。
「・・・なぜ隠す」
「べっ別に」
「見せてみろ」
羽鳥は無理やり吉野の手から奪い取り、高くあげる。
返せ!、と飛んでくるが、身長的に吉野はまったく届くわけ無く、顔を真っ赤にしながらで睨んできた。
・・・そんなに見られたくないのか?まさか柳瀬の絵がいっぱいあるとか。
自分で考えたことにへこみそうになりながらも、ゆっくりページをめくると。
「・・・・・・・・・俺?」
そこには制服姿の羽鳥が何ページにもわたって描かれていた。
耳まで真っ赤にして吉野は俯いてしまう。
でもさっきの言葉が蘇る。
『スケッチブックっていうのは、いつの間にか自分の好きなもので溢れていくもんなんだって』
「吉野、これって・・・」
「うるせー!きっと目の前にいつもいたから描いただけで、別に好きとかそんなんじゃ・・・」
今、吉野が俺に好意を抱いてくれているのはわかるが、・・・もしかしたら昔も、ほんと無意識に俺のことを好きだと思ってくれていたのなら。やばい、頬が緩んでしまう。
「うれしいよ」
「・・・・・・ん」
ほんの小さな思い出も、お前がいてくれるだけでこんなにも色鮮やかになっていく。
俺を描いていたときの吉野はどんな目をしていただろうか?そんな記憶のページもめくりながら、少しだけ思い出に浸ってしまった。
「これもらってもいいか?」
「別にいいけど・・・」
「それと、新しいスケッチブックでも買いに行くか?お前らくがきするのはいいが、紙ぐちゃぐちゃにするだろ」
「マジ!?行く!」
吉野は嬉しそうに顔を輝かせた。
あの頃と変わらない、俺の大好きな笑顔で。
fin
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