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世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
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~羽鳥芳雪の場合~

思ったより遅くなってしまったな・・・。
日直だった羽鳥は先生に頼まれた仕事を終え、吉野が待つ教室へ歩いていた。
吉野をはっきり好きだと自覚して早数年、柳瀬のせいでその気持ちはますます募っていく。
一生伝えることは無いだろう。俺のことを幼なじみとしか見ていない相手に言ってどうなるというんだ。ただ今までの関係が崩れるだけだ。
「・・・そういえば、吉野のやつ様子が少し変だったな」
吉野はすぐ顔に出る。さっきも何か言いたげな顔をしていたが、結局笑って誤魔化されてしまった。
クラスのやつに何か言われたのだろうか?
前はよく描いている絵のことで周りにからかわれることがあった。確かにかわいい系の絵かもしれないが、それも含んで吉野なんだ。からかわれることなんて何一つ無い。

いつの間にか駆け足になり気がつけば教室の前に着いていた。息も整えないまま扉を開ける。
「吉野、待たせてすまなかったな。思ったより先生の話が長くて。帰るか・・・、っなんで泣いてるんだ?」
思わずその涙に見とれてしまった自分がいた。
「吉野?」
「別に、なんでもねーよ。ほら帰るぞ」
涙をふき、俺に目を合わせないように立ち上がった吉野の腕を掴む。
「待て。なんで泣いてたんだ。誰かに何か言われたのか?」
嘘が下手なくせに隠そうとするのが吉野の悪い癖だ。またあの時みたいにからかったやつがいるなら、多分俺は黙っていられない。
「なんでもねーって!」
「嘘をつくな!・・・心配してるんだ」
そう言うとなぜか俯いてしまう。
「・・・なくせに」
「え?」
よく聞こえず聞き返すと、キッと睨んだ顔で叫ばれた。
「俺のこと嫌いになったんだろ!」

・・・今こいつ何て言った?

吉野は頭で考えたことをそのまま言うから、驚かされることがよくあるが・・・。今回は本当に何を言ってるのかわからない。

「・・・嫌いって、え?誰が誰を」
「お前が俺をだよ!・・・お前最近なんか冷たいし、あんま笑ってくれないし。俺のこと嫌いになったんだろ」

冷たい。
その言葉に俺は何も言えなくなってしまった。確かに俺の吉野に対する態度は前より少し冷たくなったかもしれない。でもそうでもしないとこの気持ちが溢れてきそうで。
けどな、

「だから、・・・だから。ぐすっ、きらいなら・・きらいってハッキリいえよ、ばかトリ」

お前のことが嫌いだと?
ふざけるな・・・!!

「おい、なんで俺がお前を嫌いにならなきゃいけないんだ」

間抜けな顔で見つめられ、深くため息をつく。
「いや、だから・・・、俺がトリに呆れられるようなことばっかやってるし」
「そんなのいつものことだろ」
今さらお前のバカで天然で子供っぼくて無自覚ですぐ勘違いする性格に文句なんて言うわけがない。
「じゃあ何で最近俺に冷たいんだよ!」
「それは・・・、」
言ってしまえば楽になる。でも今の俺にこの時間を失う勇気は、無い。
「それは、久しぶりにお前と同じクラスになれたのがうれしくて、なんかどう接して良いかわからなかったからだ」
嘘では無い。半分は。
「何・・・それ」
「今言った通りの事だ」
吉野は涙を拭いながらいつもの笑顔で笑った。
「っぷ、何それ。あはははは、クラス違ったっていつも一緒にいたじゃんか」

これでいいんだ。

「そうだが、クラス行事とかはさすがに無理だろ」

この気持ちは絶対に伝えない。

「そうだけどさ~、はは。ダメだ自分にもウケる」


散々笑った吉野がふいに俺の手を掴んだ。イタズラっ子みたいな表情はついかわいいと思ってしまう。
「じゃあトリ。俺のこと好き?」
「っ!」
なんてことを言い出すんだこいつは!!
チラっと吉野を見ても、楽しそうに俺を見上げているだけだった。無自覚もここまでくると・・・。

だったら言ってやるよ。たとえそれが、こいつにとって違う意味だとしても。
「・・・・・・、好きだよ。吉野のことが好きだ」
そう言ってぎゅっと吉野の手を握った。
笑って返されると思ったが、意外にも吉野は真っ赤になって見つめかえしてきた。
「っっ!!あ、うん・・・俺も、好きだよ」
そのまま抱きしめたい気持ちを抑えて、羽鳥は自分から手を離した。
もう我慢できる自信がなかったから。

「ほ、ほら帰るぞ」
そう不器用に言って歩く後ろ姿を追いかける。
恥ずかしそうに何度もこっちを振り返る吉野に笑うと、また俺たちはたわいも無い会話をしながら家へ帰った。

これが幼なじみとしての俺の役目なのだから。



fin

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