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世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
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つづきです。

「こんな所に喫茶店あったんですね!」
雪名が連れてきてくれたのは書店から10分ぐらいのアンティーク風な喫茶店。大通りからは少し見えにくい所にあるからか、今まで気付かなかった。だが常連客が多いのだろう。店内には結構な人がいた。
3人は窓際の席に座ると、それぞれコーヒーを頼んだ。
「良い雰囲気の店だな」
横澤も表情を柔らかくして言った。
「でしょ?前はバイト帰りによく来て本を読んだりしてたんです」
「前は?」
「ははは、今は早く家に帰りたい理由ができちゃったんで」
彼女・・・とかかな?
「そんなことより、横澤さんと知り合いって事は吉野さんも丸川で働いているんですか?」
「え!?ぃや・・・丸川では・・・・・」
「じゃあもしかして漫画「吉野さんは!」
焦ったように横澤が言葉を被せた。少し大きな声を出してしまったので、1度咳払いをして続けた。
「・・・吉野さんは、その・・・・・プ・・プロのアシスタントさんなんだ」
「そうなんですか!?」
「は・・・はい。アシスタント・・・です」
雪名さんには申し訳なかったが、今は横澤さんの機転に感謝だ。
コーヒーが運ばれて、それぞれの前に出される。横澤はブラックのまま口に運んだが、2人はミルクや砂糖を入れた。
冷まそうと吉野がふーふーしていると、雪名はしみじみと話し始めた。
「なんか、もちろん絵を描く漫画家さんもすごいと思いますけど、細かい背景をあれだけ描けるアシスタントの人もほんとすごいと思います。尊敬しちゃうな」
・・・普通の読者なら、あまりアシスタントの事なんて考えないで読むだろうに。
その言葉は優に聞かせてあげたかった。
「ありがとうございます。ゆ・・・雪名さんは、その・・・美大生なんですよね?どんな絵を描いてるんですか?」
「俺は一応油絵を専攻してます。いっつも汚いつなぎ着てみんなでがんばってますよ」
笑いながら雪名は言った。
「いいですね。自分も絵の具まみれになって描いて、それって絵だけじゃなくて描いた本人も合わせて作品な気がします。俺好きだな、そういうの」
「・・・・・・なんか、ちょっと照れますね」
恥ずかしさを紛らわすためか、コーヒーをすすった。顔を赤くした雪名に聞こえないよう吉野はそっと横澤に尋ねる。
「俺・・・変なこと言いましたかね?」
「いや、あれは喜んでますよきっと」
ならいいんだけど・・・。
そこから大学生活や、丸川の事を話しあっという間に時間は過ぎていった。



「ーーーそれでですね」
ブーブー・・・。
突然携帯のバイブ音が鳴った。
「すいません、俺です」
だが雪名は携帯を見た瞬間うれしそうに顔をほころばせた。
「ちょっと出てきますね」
立ち上がり玄関へと駆け足で行った。
「なんか雪名さんって今時の大学生って感じですよね」
「でもあいつバイトの割にしっかりしていて、結構気に入ってるんです。うちの会社の本たくさん売ってくれますし」
冗談っぽく言うその姿は、まるで雪名さんのお兄さんみたいだった。



少し待つと電話を終えた雪名が戻ってきた。
「すいません」
「いや、大丈夫か?」
「はい。木佐さんからでした」
木佐?
そういえばエメ編に木佐って人いたよな・・・。
「お前ら意外に仲良いよな」
「もうラブラブですよ!そういえば俺が木佐さんに会えたのって横澤さんのおかげでもあるんですよね。まさに俺らにとっては恋のキューピットですよ!」

「「ぶっっっっ!!!!!」」

コントのように2人でコーヒーを吹き出しそうになってしまった。
吉野はラブラブをツッコむ以前に、横澤のキューピット姿を想像してしまって必死に笑わないように口を手で覆った。
だが思いっきり肩が震えている。
「気持ち悪いこと言ってんじゃねーよ!誰がキューピットだ!!てかお前らもうどういう関係・・・・・・吉野さん。いっそのこと声出して笑ってください。逆に恥ずかしいです」

「「あははははははは!!」」

「お前は笑うな!」
ツボに入ったのか雪名も腹を抱えて笑った。
「・・・くそ、ほらもう1時間たったぞ。俺は帰る」
「ははは・・・も・・もうそんなたちましたか」
「じゃあ、そろそろ行きます?・・・ぶっ!」
なかなか笑いが止まらずいると、先に立った横澤にギロリと睨まれてしまった。
「「すいません」」





****

会計を済ませて外に出ると、冷たい風が頬にあたった。
「あの・・・今日はありがとうございました。とても楽しかったです!」
ぺこりと吉野は頭を下げた。
「俺もです!次は食事でもしましょうね」
最後に出てきた横澤は財布をしまうと、雪名の頭を掴み思いっきり前に倒した。
「こちらこそ、こいつの勝手に付き合ってもらいありがとうございました」
「いえいえいえ!横澤さんとも仕事以外の話ができてうれしかったです」
こんな機会滅多にないだろうし。
「ちょ、よ・・・横澤さん。まだ怒ってるんですか?」
「うるさい」
べしっと頭を叩いてじゃれあう姿に、こっちまで笑ってしまった。
うん、今日は来て良かった。
「ははは、・・・じゃあ俺はこれで失礼します」
名残惜しいけど、この2人のためにももっと良い漫画を描きたい。
もう1度頭を下げ、吉野は人混みの中へ入っていった。




姿が見えなくなると、雪名は吉野の行った方を見ながらトーンを変えずに呟いた。
「ねぇ、横澤さん」

「なんだ」

「吉野さんって・・・・・『吉川千春先生』ですよね?」

「っっ!?・・・・・・・・・どうして、そう思う?」
くるっと横澤の方を向き直し、笑顔で答えた。
「勘です!」
「・・・・・・はぁぁぁぁ」
「ただ、話していて俺の吉川千春像にピッタリだったんです。ちょっと子供っぽくて、でも独特の考察力がある所とか」
それは俺も同じだ、とは言えないよな。
こいつなら本当の事を言っても他にバラすような人間じゃないことぐらいわかっている。ただこれは本人たっての希望だ。

ーーーだったら
「俺はお前を信じている。・・・・・・この答えで勘弁してくれ」
そう言うと雪名はうれしそうに笑った。
「はい!!」



「じゃあ俺はこれから仕事だ」
「お仕事がんばってください」
「あぁ、じゃあな」
後ろ姿を見送ると、自分も逆の方向へ歩き始める。
息を吐くと白く空へと浮かんでいった。

ちょっとした出会いでいつもの日常が変わっていく。

あの人の目には世界がどんな風に見えるんだろう。

どんなことを感じ、何を思って絵にしていくのだろう。

高ぶる気持ちに押され、気が付けば走り出していた。

約束の時間まであと少し。

俺の運命の人を抱きしめるまで あと 少し。





fin

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コメント
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さぁ、恋人に会いに行け!
私の勝手なリクエスト、本当に聞いてくださり、ありがとうございました!!
千秋と雪名のセカンドコンタクト、素敵すぎました!引っ込み思案で引き気味な千秋とキラキラ半暴走雪名。あの二人は表向きな性格が正反対なので、店員とお客(漫画家)という枠を飛び越えたらどうなるのかなーって少し興味あったんです!まさかお茶まで一緒にできるとは…
千秋の前作その後も書かれて。雪名の強引さにも、横澤さんのフォロー完璧!なんか親子みたい…(ごめんね、トリ。でも君は恋人だから!)
出ましたね、「童顔にもほどがある」!それ、木佐におかしいって言われたのにっ!(笑)
横澤さん、やっぱり丸川の人間と雪名を繋ぐ架け橋!彼の立ち位置って、凄く重要だと思うんです!まだ横澤隆史の場合3巻読んでないんですが、雪名の言うように、本当に木佐と雪名のキューピッドですよね。にしても、あれだけおおっぴらに言って…雪名くん、木佐さんに怒られますよ。二人が突っ込まなくてよかったね。そして君は運命を信じてるんだね。流石少女漫画思考。
横澤さんのこと、自分で言いながら笑うとか…ほぼ同じ年なのに、大物だ。
吉川千春を見破るのも流石ですね。少女漫画読み込んでいるだけある。木佐に会ったら、今回のこと、どう話すんですかね?見破ったことは言わないでしょうけれど。
ああ、感想書き足りないんですが、二話構成にしていただけるとは…もう頭からラストまで感動の嵐でした!細部までセカコイ、原作から離れたサイドワールド展開で、感無量です。
本当にありがとうございました!
最後に、タイトル好きです。3人の代名詞ですね☆
…あれ、千秋は漫画、買ったんだろうか?
Lily 2012/12/10(Mon)20:24:05 編集

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