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世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
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*前回の、2人の『はとり』のつづきです!


「千秋、夕食の支度できたから片付けろ」

「千秋、テレビ見てないでネームの直し早くやれ」

「おい、千秋」



「........トリ、状況が読み込めない」
わなわなと手に持ったシャーペンを震わせながら吉野は言った。

先程から俺はなぜか名前で呼ばれ続けている。
「状況?別に普段と変わらないだろう」
「真顔で言うな!」
別に名前で呼ばれることが嫌って訳ではない。けれど、何というか....慣れてないから恥ずかしくて落ち着かないんだ。
「だから、なんで名前で呼んでんだよって話」
「......はぁぁ」
隣に座る羽鳥は大きくため息をつくと、表情を変えずまた資料に目を向けてしまった。
なんだよ、騒いでるこっちがバカみたいじゃないか。
俺が何したって言うんだよ.....。


今日は丸川で今度公開されるアニメ映画の打ち合わせがあった。そこで話した脚本家の方が『葉鳥』って名前で、紛らわしいかと思って(実際は冷たくされたちょっと仕返しもあるけど....)トリのこと芳雪と呼んだら、なぜかこうなった。

......あれ、原因俺じゃね?


「とにかく、恥ずかしいから名前であんま呼ぶな!やめないなら俺だってトリのこと名前で呼ぶぞ」
「じゃあ呼んで」
「え....」
シャーペンを持っていた方の腕を掴むと、羽鳥はぐいっと自分の側に引き寄せた。
一気に近くなる顔に心臓が高鳴る。
からかうような笑顔で吉野の耳元に近づくと、また違った声色で呟いてきた。
「どうした?呼ばないのか、なぁ....千秋」
「っっ~~!!誰が呼ぶかアホトリ!もういい、寝る!」
勢いよく立ち上がると逃げるように寝室へ走っていった。
「待て、だったら俺も寝る」
「それじゃあ逃げる意味ないだろ!」
後ろから追いかけてくる羽鳥に文句を浴びせドアを閉めようといた。しかし寸前で掴まれてしまいそれは叶わなかった。
「......手離せよ。ドア閉められないだろ」
「あいにくソファーで寝ると腰を痛くするんでな」
力勝負で羽鳥に勝てるわけもないのは十分承知だ。吉野はドアを閉めようといた手を外し、何も言わずベットに入っていった。羽鳥も無言でそれに続く。
大の大人が2人寝ても十分すぎるベットは、端で寝てしまえば隣の人間に手が届かないほどだ。
吉野はふてくされた顔のままベッドの端に陣取った。
まぁ....どうせトリのことだからすぐ隣にくるんだろうけど。
目をつぶり後ろで羽鳥が布団に入る音が聞こえる。だがいくら待っても背中は冷たいままだ。ちらっと後ろに目をやると吉野と同じように羽鳥もベッドの端に寝ていた。
なんでそこにいるんだよ.....。

どこに向けていいかわからない怒りを抱えながら、吉野は考えるのをやめ眠りについた。



そういえば前にも似たようなことがあった気がする。

なんだっけ....





****

「おーい千秋、今日の放課後暇?」
「ゲーセン行かね?ゲーセン」

「え....」

ふと目を開けると懐かしい教室の風景。
あれ、さっきまで俺...何してたんだっけ?

「聞いてんのか?....具合でも悪いのか」
同級生達が俺の顔を心配そうに覗き込んできた。
何を考えてるんだ俺は。懐かしくなんかない、これが日常じゃないか。

「あ、悪い悪い。えっとゲーセンだっけ?もちろん俺.....も...」

俺も行く。
そう言おうとしたのに、なぜか言葉につまってしまった。
頭に浮かぶのはトリの顔。
トリに会わなくちゃ。

「ご、ごめん。俺トリと約束があるんだった!じゃあ!」
後ろで友人たちの声が聞こえたが、吉野は教室を飛び出した。羽鳥がいるであろう隣の教室のドアを勢いよく開けたが、中にはいなかった。
どこだ?
もう帰っちゃったのか?
理由はわからない。ただ、なぜか今トリに会わないとダメな気がするんだ。
会いたい。

トリの声で名前を呼んで欲しい。

いつものように、『千秋』って。



「おい、そんなところで何をしてるんだ?」
「....っ、トリ!」
鞄をもった羽鳥が廊下を歩いてきた。
ようやく見つけられたと安堵のため息をもらしながら羽鳥へと近づく。
「いや、なんか無性にトリに会いたくなったっていうか.....
「.....お前は子供か」
「うるせー!」
羽鳥は小さく笑いながら優しく頭を撫でてくれた。
あぁ、やっぱりいつも通りの日常だ。


「じゃあ帰るか、『吉野』」


「...........え」
歩き出した羽鳥が吉野の横を過ぎていく。

違う。

とっさに羽鳥の腕を掴んだ。
「ちょ、待って。今....名字で呼んだ?」
「?それがどうした」
振り向いた羽鳥はなぜか目を合わせないまま呟いた。
「どうしたって、今まで千秋って呼んでたじゃんか。なんで突然変えるんだよ」
数秒の無言が続く。
吉野は睨み付けるように羽鳥を見据えた。
「俺たちも子供じゃないんだ。呼び方1つで別に騒ぐことじゃないだろ。俺は今日からお前のこと吉野、と呼ぶ」
「意味...わかんねーし....」
「だって俺たちは、ただの幼なじみだろ?」
なぜか体に力が入らなくなり、掴んでいた腕がだらっと下に落ちた。
羽鳥は何も言わず、また歩き出した。

なぜか以前にも同じようなことがあった気がする。
あるわけないのに。
こんなショックなこと忘れるわけがないのに。


ーーいや、

『昔の俺は』そのあたりまえの奇跡に気づけないでいたんだ。


「俺はぜってぇー、ずっとトリって呼ぶからな!大人になっても、じいちゃんになっても呼び続けてやるからなー!」

虚しく響いた俺の声。
1度も振り返らないまま羽鳥は夕焼けの廊下を歩いていく。
悔しくて、寂しくて、ただこの怒りという感情だけは、自分に向けたものだと。

そう感じた。





****

「ーーき、千秋!おい、吉野!」
「っっ....あれ、」
「大丈夫か?うなされてたぞ....」
ここは、自分の家の寝室?
枕元の明かりだけで照らされた部屋はここが現実だと俺に言っている。
でも....確かにさっきまで教室に。
混乱している頭をなんとか整理しようとするが、まっまく機能しない。
何より1番の違和感は。
「トリ....老けた?」
ぴくっと眉間に皺を寄せながら頬をつねられた。
「いててててててててててっ」
「寝ぼけてるなら起こしてやろうか?」
「起きた!めっちゃ起きたから!」
ぱっと手を離され、赤くなっているだろう頬さすった。
マジで痛かった....。
「はぁ...、うなされていたから起こしてやったんだぞ」
「....うん」
あぁ、こっちが本当のトリだ。
なんか泣けてきそう。
「....えへへへ」
「吉野....本当にどうした?そんなに名前で呼んだことでも怒ってるのか」
心配というより変なもの見るような目で顔を覗いてきた。
だって仕方がない。
泣きそうで、嬉しいのだから。
「ちょっと、夢見ただけ。...昔はトリが俺に対する呼び方変えた時、すげー反発したなって思って」
羽鳥は少し驚いたような表情をすると、ばつの悪そうに顔をそらした。
「..........あの時は、お前への気持ちを諦めようと必死だったんだ。そんなこと....無理に決まっているのに」
自嘲気味に羽鳥は呟いた。

「ねぇ、トリ。名前で呼んで」
「....さっきから何なんだ。突然昔の話をしたと思ったら、逆のこと言い出して」
「細かいことはいいんだよ、ほら」
呆れた顔をしていた羽鳥だったが、1つため息をつき静かに声を発した。

「千秋」

「何、トリ?」

「....俺には名前で呼ばして、お前はいつも通りのなのか?」

「だってトリはトリじゃんか」

「答えになってないぞ...」

またもや呆れ顔の羽鳥を見ながら吉野は楽しそうに笑った。
「よし、すっきりしたから寝る」
「俺は全くすっきりしていないんだが?」
寝転がる吉野を押し倒すように覆い被さってきた。つむじにキスをおとし、ゆっくりと服のなかに手が入ってくる。
「ちょっ、今日は幼なじみ気分だから嫌だ」
「....なんだそのよくわからん気分は?」
「いや、トリと俺って幼なじみ兼恋人だろ?だから今は幼なじみの会話がしたい気分っていうか....あれ、自分でもよくわかんなくなってきた」
「相変わらずお前は....」
おでこにそっとキスをしたかと思うと、そのまま横に寝転がり吉野を抱き締めた。
「その幼なじみ気分ってので、抱き締めたまま寝るのはアリなのか?」
「え?えっと....ギり...セーフ?」
「...っぷ、なんだそれは」
「わ...笑うな!」
抱き締められてるせいで表情は見えないが、肩が震えてる所をみると結構笑われてる。ボキャブラリーが無くて悪かったな。
「それと、さっきの幼なじみ兼恋人だが、もう1つ担当編集も忘れるなよ」
あ......。
「....すいません」
「まぁ、今は幼なじみなんだ。仕事の話は無しで、またバカでくだらない話でもするか」
「じゃあ明日のご飯の話から!」
緩んだ腕から少し抜け出し、羽鳥と同じ目線に移動する。
「それは幼なじみに入るのか?」
困ったように笑いながら俺の髪を撫でた。

「いーの」


それが俺たちの関係なんだから。





fin

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