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世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
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前回の『高野さん聖誕祭2013』のつづきです。
初!杏ちゃん登場。
てか律っちゃん最初しかでません。すみません....
それでもいいって方はmoreよりどうぞ



マンションまでの坂道。
吐いた白い息はすっと横へ逃げていく。
冷たい空気に頬は少し痛くなるが、それとはあまりに対照的な暖かい手を意識するたびほほが緩んでしまった。

本当に今日は小野寺と一緒に帰ることができた。
途中予約しておいてくれたらしいレストランで食事もとった。
そして今はこうやって手を繋いで歩いている。

「.......幸せだ」
「何か言いました?」
「いや....」
思わず出てしまった言葉を誤魔化し、また前へと向き直した。
「そうだ。高野さんこのあと時間ありますか?よかったら家に来てくれません?」
思い出したように上目遣いで尋ねる。
「.........それは夜のお誘「違います」

やはりデレ100%では無いらしい。

「別にいいぞ」
「よかった。この前女性編集の方においしいケー.........キ」
「?」
なぜかケーキらしき単語を言ったあと小野寺は足を止め固まってしまった。
「.....どうし「あああああぁぁぁぁああああ!!」
「っ!?」
突然大声を出したかと思うと電源が切れたみたいにぷつんっと止まってしまった。

「.............ケーキ」

「ケーキ....?」

「取りに行くの忘れてた」

「...........は?」

またもや言葉になってない声を発しながら悶え始めてしまった。
おそらくケーキというのは俺の誕生日ケーキのことなのだろう。
.......そんなことまで用意していてくれてたのか。

「落ち着け、ケーキ屋ってのはもう閉まったのか?」
「え.....ちょっと待ってください。っあ、たぶんあと10分大丈夫です!今から取り入ってきます!」
それだけ言うと俺に荷物を預け走り出してしまった。
「財布持ったかー?」
「持ちましたー!高野さんは家で待っていてくださいー!」
走っていく後ろ姿がだんだん小さくなり、俺もマンションまであと少しの道を歩き出した。
予約忘れるとか、ほんと時々ぬけてるよなー。まぁ今日はいつもより落ち着きがなかったし、あいつも緊張してたのかもな....。
....って、それは俺も同じか。


マンションの入り口が見え、ふと顔をあげると人影が見えた。近づくにつれ次第にハッキリしていく。
「あ.....」
外で待っているからか頬が赤く染まり、恋人を待つかのようキョロキョロと辺りを見渡していた。

あの日と重なる。

胸の奥がぎゅっと締まるのを感じた。
入り口まで行くと相手もさすがに気づいたのだろう。大きな目をますます大きくし驚いたように少し口を開けた。
「あなたは.....」
「......こんばんは」
ひとまず挨拶をすると気まずそうに小さく「こんばんは」と口にした。

小日向杏。
小野寺の従妹で、婚約者。

「.......小野寺なら今、忘れ物とりに行ってるから。10分ちょいで帰ってくると思うよ」
「.......なんで隣の人が知ってるんですか?」
「まぁ、さっきまで一緒に帰ってたからな」
「.......」
上っ面の会話は得意なはずなのに、どうも彼女の前ではうまくいかないらしい。
俺と小野寺との関係を知っている唯一の人間。
彼女は周りには言っていないのだろうか......いや、もし言ったら小野寺への風当たり確実に強くなる。好意を寄せていた相手がそんな場合に陥るのは彼女も避けたいはずだ。

それに、一応俺とは『恋敵』という関係だ。本当は顔も合わせたくないだろう。

「あの、勘違いしないでくださいね。これはおばさんに、律っちゃんのお母さんに頼まれてお土産を届けにきただけです」
「......あぁ」
小野寺の両親にとっては彼女と結婚して、家を継いでくれるのが1番の理想なのだろう。
わざわざ気を使って仲を取りまとめようにしているのに違いない。

外で待ってようと思ったが、これは家に入った方がいいのかもしれないな。
....いや、でも俺がいない間に小野寺と彼女がしゃべっているのも、正直まだ辛い。

「.....律っちゃんは、もう悲しい顔をしていませんか?」


「え......」
突然の質問に思わず間抜けな声を出してしまった。
小野寺が悲しい顔?
どういう意味だ?
「すいません変なこと言って。なんか思い出しちゃったんです....昔のこと」
「昔?」
杏は壁に寄っ掛かると遠くを見るように話始めた。
「私たち一人っ子同士だから、律っちゃんがずっとお兄ちゃん代わりだったんです。いつも一緒に遊んで、本読んで、勉強もよく教えてもらって。本当に大好きでした、もちろん今も変わらず....」
「高1の時に告白して、でも断られちゃって。好きな人がいるからって言ってました。その時の律っちゃん私より顔真っ赤にしてて、自分はその人には敵わないなって思っちゃったんです。」
「........」
「でもいつからだったかな.....、律っちゃん全然笑わなくなっちゃったんです。話しかけても作り笑いばっかで、部屋に遊び行ったときなんか泣いてて。その上いつの間にか留学なんかしちゃって....」


......今の俺なら容易想像できてしまう。

あの小さな体を悲しみでいっぱいにして。
何を考えながら留学していったんだ?

俺を恨んで?

それともお前のことだから自分を責めたのか?


ーー今の俺には知ることもできないけど。




「すみません、しゃべりすぎちゃいましたね」
杏は体勢を直すとこちらに近づき、お土産らしき紙袋を差し出してきた。
「これ、律っちゃんに渡してもらってもいいですか?やっぱりまだ会うのはちょっと気まずくて」
その言葉には不釣り合いな赤く染まった頬。
本当は会って話しがしたいから寒空の中待っていたんじゃないか?
だが、そんなこと聞ける資格は俺には無い。
「わかった。.....いいのか?」
「いいんです。じゃあ私はこれで」
そう言うと頭を下げ俺が来た道とは逆方向に歩き始めた。

「.......っ、小日向...さん!」

思わず呼び止めてしまい少し声が裏返ってしまった。
「....はい?」
「さっきの答え、言っていなかったので。あいつは....律は、昔と違って素直じゃなくて生意気で、意地でも俺に弱みなんか見せようとしませんけど、今日はたくさん笑顔を見せてくれました。もう2度とあいつを悲しい顔になんかさせません。約束します」
自分で言ってて答えになってないかもしれないが、どうしても伝えたかった。
「っ....お隣さんがもっと悪い人だったらよかったのに...
「?」
「....そんなの当たり前です。律っちゃんの恋は応援するって言いましたが、私まだ諦めてませんから。私だって負けないぐらい大好きなんです!」
挑戦するかのように視線をこちらに向けた。
「.....俺だってあいつに関しては負けませんよ。あと、お隣さんじゃなくて高野です」
杏はきょとんとした顔をすると、突然くすくす笑いだした。
会ってから初めて見る本当の笑顔かもしれない。
「じゃあ高野さんこそ、年上なんですから敬語やめてください。なんか馴れないんで」
「....あぁ、そうさせてもらう」
また少し笑うと着ていたコートをふわっとさせ、後ろ歩きでこちらに手を振ってきた。
「今日は話せてよかったです!」
「俺もよかった。今度はちゃんと律に会いに来てやってくれ。きっと喜ぶ」
「.....はい!」
もう1度大きく手を振ると駆け足で坂をのぼっていってしまった。

「こりゃあ油断してたら危ないな....」
だがなぜか笑っている自分に気付き口をおさえながら壁に寄りかかった。


あの時間には戻れないけど

まだ新しくやり直すことはできる

あいつが俺に与えてくれたこの感情を

まだ全然返しきれていないのだから


空を見上げると珍しく一面の星空が輝いていた。
小野寺が帰ってきたらまず何と言おうか?
いや、それよりきっと走って赤くなった顔にキスをして、思い切り抱き締めよう。

あぁ.....早く笑顔が見たい。




小野寺が帰ってくるまであと数分。





fin

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