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世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
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修羅場中の話。


まさに今のこの状況は、目が回るような忙しさと言えるだろう。

アニメ関係の仕事やその分の描き下ろしの漫画。本誌の連載はもちろん今回は表紙&センターカラーも描かなくてはならない。


正直.....本当に、死にそうだ。



****

「千秋、さっきの所終わったよ。他にこっち渡せそうなのある?」
「えっと.....じゃあここの背景お願い」
「了解」
カリカリと鉛筆やペンのはしる音だけが部屋に響いている。
言わずもがな修羅場の真っ只中だ。
とはいっても、今回は不幸にも.....いや、ありがたいことなのだが仕事の量が明らかに普段より多かった。きっと羽鳥による年密なスケジュール計画がなければ今頃もっと大変な事になっていたに違いない。

羽鳥と最近まともに会ってないな....。

自分も忙しいのだから担当編集である彼だって同じだ。ここ1週間は会っても事務的なやり取りだけ。
辛くないと言えば嘘になるが、今は原稿だ。他のことを考えている暇など無いんだ。
そう、考えてはいけないのに........。


「差し入れ持ってきたぞ」


なんでこう....ある意味良いタイミングで来ちゃうんだよ。


羽鳥の持ってきた差し入れでアシスタント達はそれぞれ休憩に入った。とはいっても無理やり腹に食料を入れ、気休めのドリンク剤を一気に飲んでいるだけである。
ここまでくると休憩の数分でさえも惜しく感じてしまうのだ。
もちろん俺はその休憩さえもしている暇は無い。自分が描かなきゃアシスタント達の仕事が止まってしまう。
原稿を描いていると少し影がかかった。
「進み具合はどうだ?」
羽鳥が横から手元を覗いてきていた。
「なんとか明日の昼までには.....がんばる」
こういう時自信満々に返せない自分が悔しい。無駄に虚勢を張ってもどうせ羽鳥にはお見通しなのだけれども。
「そうか、思ったよりは進んでいるみたいだな。今回はきついスケジュールで本当にすまないな」
「別に羽鳥が謝ることじゃないよ」
「?........あぁ。じゃあ俺はまた会社に戻るな」
「うん」
なんとか笑顔を向けると、羽鳥は何か言いたげな顔をしながら部屋を出ていった。
よし、頭を切り替えなくては。
そう意気込んで鉛筆を強く握ると、ドリンク剤を飲んでいた柳瀬が少しだけ不機嫌そうに言った。
「千秋、呼び方変わってる」
「え?」
「また無意識だよこいつ」

呼び方?
誰に対して?羽鳥?

あれ..........羽鳥?

「うん......ごめん。ちょっとトイレ行ってくる」
「.....早く戻れよ」
駆け足で部屋を出ていくと、ギリギリ玄関で靴を履いている羽鳥の後ろ姿を見つけた。

「羽鳥」

呼び掛けると振り向いたその表情は俺と同じで隈だらけでイケメンが台無しだ。
「どうした?何か忘れ物か?」
心配する顔に、確かに忘れ物かもと心で考えながら思いっきりその胸に抱きついた

「っっ!?お....おい、何して「静かに!」

がっしりした体に、温かい体温。
耳を左胸に移動させ心臓の音を聴き全身に響かせる。


ドクンっ

自分の心臓の音とリンクさせるように。

ドクンっ


速かった鼓動が少しずつゆっくりと安定していった。
音が重なっていく。


「.......................よし!!!」
ガバッと体を離すと、状況を読み取れてない羽鳥が訝しそうに見下ろしていた。
「......俺はしゃべっていいのか?」
「うん!ありがと、トリ」
はぁぁ、とため息をつくといつものようにぐしゃぐしゃと頭を撫でてきた。
「よくわからんが、さっきより幾分か顔色が良くなったな。あと少しだ、がんばってくれ」
「吉川千春大先生にかかれば余裕だっつーの」
「ふっ....そうか」
羽鳥は優しく微笑むとまた少し頭を撫で、会社に向かった。




「せんせー、アシスタントを待たせてなにやってんですかー。最低ですよー」
部屋に戻るといじけたように顔を合わせない柳瀬が嫌味を言ってきた。
優が俺のこと『先生』と呼ぶときは、大抵不機嫌な時か暇なときだ。
「優怒んなってー!....あれだよ、原稿のことでトリに言い忘れたことがあって」
「ふーん.....」
まったくもって興味が無さそうな返事だ。
「そっ...それに調子も出てきたから一気に描き上げるぜ!」
「....ガンバッテクダサイ」
「なぜ片言!?」

まぁこんなやり取りいつも通りのことだ。
吉野は自分の椅子に座ると、ひとまず天井へと腕を伸ばした。
手首もほぐし小さく深呼吸。

「よしっ」

そうしてまた原稿へ向かっていった。





fin

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