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世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
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つづきです。

11時00分
「あれ、小野寺さんも“宇佐見秋彦”読むんですか?」
今2人がいるのは吉野が来たがっていた書店。噂通りの広さでこれなら何時間でもいても飽きなさそうだろう。
「はい、大ファンなんです!!それに昔1度だけ担当させてもらった事もあって・・・先生すごく優しい人なんですよ」
新刊コーナーで山積みになっていた本の前で、小野寺は興奮気味に言った。やはり多くの本の中で、宇佐見秋彦のだけどこかオーラを感じる。装丁や話のもっていきかた、俺にとって勉強になることがいつもあった。
「へー、すごいですね!俺あまり小説は読まない方なんですけど、この人のだけは毎回欠かさず買って読んでるんです。前回のも泣けましたー」
「やっぱ泣けましたよね!・・・・・なんか、吉野さんとこんな話ができるなんて、未だに変な感じです」
「ははは・・・、会うとしたら修羅場とかでゆっくり話した事なんて無かったですもんね」
それに関しては本当に頭が上がらない。
「そうだ。もしよかったらオススメの漫画とか教えてくれませんか?吉野さんなら詳しいかなって」
「俺なんかでよければいいですよ」
自分には絵を描くか好きな漫画の話をするぐらいしかできないから
「ありがとうございます!」小野寺さんは嬉しそうに笑ってくれた。





****

12時00分
「あーーっ、見つかんねー・・・」
高野は手近なソファーに座るとイラついたように言った。自分もさすがに疲れ同じように隣に腰を下ろす。2人を探し始めてから2時間、まさかここまで見つからないとは思ってもいなかった。いくら広いとはいえ、1度ぐらいすれ違ってはいいはず。
もしや誘拐?と心配性な自分の頭が考えてしまうが、三十路近い男がさすがにありえないだろう。
「はぁぁー・・・、どうしますかね」
「はは、さすがのお前も気が滅入ってるな」
「高野さんこそ」
せっかく今日は吉野と2人で出かけられると思っていたんだ。ため息の1つぐらい出たとしても仕方ないだろう。・・・きっと高野さんも同じはずだ。
これだけ歩き回っても見つからないとすると・・・どうするべきか。


「仕方ねぇ・・・。最終手段を使うか」


「最終って・・・・っ・・まさか!高野さん落ち着いてください。あれは相当な精神的ダメージを伴います。それにできるかどうかも・・・」
「だからってやるしかないだろう。このままじゃ時間の無駄だ」
「それは・・・」
思い立ったらすぐ行動と、高野は立ち上がる。こういう所はさすがすご腕編集長だと思い羽鳥も後に続いた。




****

12時15分
書店で買い物を済ませた2人は、紙袋を持ちながら目的も無く歩いていた。
「いろいろ教えてもらっちゃってすいません。勉強になりました」
「えへへ、こんな事しかできないんで」
恥ずかしそうに笑う姿に、年上ながら可愛いなと思ってしまう。羽鳥さんがいつも吉野さんとの電話で表情が柔らかくなる気持ちも今ならわかる気がする。
「吉野さん。このあと行きたい場所はありますか?」
「んー・・・、これといって無いですね。でもトリが・・・・・・・・・・・・あ」
「?どうしましたか」

「トリ探すの忘れてた」

「あ」
やばい、自分も素で高野さんのこと忘れてた。そう思うと急に荷物が重く感じてしまう。
「だ、大丈夫ですよ!今からちゃんと探せば見つかりますって」
「はい・・・」
吉野は暗い顔というより、少し怯えたような表情になってしまった。羽鳥さんは年末に大反省会をやるぐらいの人だ。きっと怒られる心配をしているのだろう。元気づけようと言葉を発した瞬間、放送を知らせる明るい音が響いた。


ピーンポーンパーンポーーン

『迷子のお呼び出しを申し上げます。東京都よりお越しの、小野寺律くん。吉野千秋くん。保護者の高野様と羽鳥様が、1F迷子センターでお待ちです』
『律くんは茶色のニット、千秋くんは青いパーカーをお召しになっております。お見かけのお客様は近くの店員にお知らせください。ーー繰り返します』


「・・・・・」
「・・・・・」

「「っざけんなぁぁあぁあぁぁああぁぁぁあーーーーーーーー!!!!!」」




****
12時20分
「お、来た来た」
「本当に2人一緒にいましたね」
迷子センターでのんびりと待つ高野達の前に2人は顔を真っ赤にしてやってきた。だんっと机に荷物を置き、1番怒りをぶつけたい相手に小野寺は叫んだ。
「何をしてるんですかあなたは!?放送で流すとか頭おかしいんですか!?バカですか!!」
「うっせーな。迷子になったお前が悪いんだろ。俺は悪くない」
「開き直るな!!ここに来るまでにどれだけ恥ずかしかった・・・!」
すれ違う人すれ違う人に見られてる気がして、顔を上げて歩けなかった。
だがそんな怒る姿に気にも止めず、高野はわなわなと振るえる小野寺の手を握った。
「ほら、まだ全然買い物できてないんだ。行くぞ」
「はあぁあ!?何言ってるんですか!はーなーせぇぇーーー!!」
手を離そう暴れる小野寺に見向きもせず、高野はぱっと仕事の表情に変え頭を下げた。
「じゃあ吉野さん。ご迷惑をおかけしました」
声色まで変えるからすごい。
「いえ・・・」
「羽鳥も悪かったな」
「こちらこそ、すいませんでした」
高野はもう1度軽く頭を下げると、無理矢理引っ張りながら歩いていく。
「よっ吉野さん!今度は食事でも」
「はい!ぜひ!」
そのまま人混みへと消えていった。


「で、吉野。何か言うことがあるよな?」
「ひぃっ!?」
おそるおそる羽鳥の顔を見ると笑みを浮かべてはいるが、明らか目が笑ってない。こういうときは素直に謝るのが1番だと思い、勇気を振り絞って顔を向けた。
「・・・・・・・・・その、ごめんなさい。だからって、あの放送はない・・・と、思います」
「自業自得だ。・・・心配したんだからな」
「・・・うん」
吉野の手から重そうな紙袋を受け取った。
「買い物できたんだな」
「小野寺さんが付き合ってくれた」
「そうか。さすがに疲れて腹もすいただろう?今からだと店も混んでるが、どうする?」
羽鳥にはすべてお見通しらしい。変な心配ばかりしていつも以上に疲れてしまった。まぁ半分はあの放送のせいだが。
「んー、じゃあトリのご飯がいい!」
「っ・・・、そうか」
羽鳥はガシガシと吉野の髪を撫でにこりと笑った。
よかった、機嫌治ってくれたかな?
「よし。飯食ったら、今日はお仕置きだな」

「・・・・・・はい?」

何を作るかな、と呟きながら勝手に歩く姿にワンテンポ遅れて追いかける。
「は!?意味わかんねーし、まだ根に持ってんのかよ!おい聞いてんのか!?バカトリぃぃいぃいぃぃーーーーーー!!!!」






fin

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