忍者ブログ
世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
<< 06  2024/07  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31    08 >>
[34]  [33]  [32]  [31]  [30]  [29]  [28]  [27]  [26]  [25]  [24
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

千秋の七夕の楽しみ方なお話。

時刻は夜の11時。
久しぶりに日付が変わる前に仕事を終わらせた羽鳥は、今朝の吉野からの電話を思い出しながらマンションまでの道を歩いていた。


「今日は絶対家に来いよ!」


ご飯を作れでも、何をしろと言うわけでもなくただ来いと言われたことはあまり無い。
何かあるか考えてはみるが、強いて言うなら今日が七夕ということぐらいか。だが天気はあいにくの雨だ。こんな都会じゃ天の川を見ることは難しいだろうが、せめて七夕の星空ぐらい見たいものだ。
「これじゃあ、今年も織姫と彦星は会えないだろうな・・・」
そんな乙女思考のセリフを呟きながら、じめじめした空気の中を歩き続けた。




****

吉野の家の前に着き、玄関のドアを開けるが中は真っ暗だった。
(あいつ、呼び出しておきながらまた寝ているのか・・・)
眉間に皺を寄せながら暗い廊下を歩き、リビングのドアを開けた。

「っ!?」







部屋一面の 星の粒


瞬く輝きが 暗い闇の中に 溢れ出す




「吉・・・野?」

その中心に、床に座りながら天井を見上げる吉野がいた。
俺の姿に気付くと、うれしそうにニカっと笑った。

「おかえりートリ、どうだ!すげーだろ!!」
両手を広げながら自慢そうに言った。
「あぁ・・・、プラネタリウムか?」
「そう!せっかく七夕なのに今日雨じゃん。だからつい買って来ちゃったんだ」

羽鳥はソファーの横に荷物を置くと、吉野の隣に腰をおろした。


「・・・綺麗だな」

「うん。どう、びっくりした?」

「まぁな」

そう言うとますますうれしそうに笑い、珍しく吉野の方から近づき寄り添ってきた。

「昔もさ、よく星とか見に行ったじゃん」

「それで帰りが遅くなって小母さん達に怒られたり、暗い道が怖くて泣き出したお前を必死に引っ張って帰ったりしたな」

「そ・・・それは忘れろよ」


泣きながら俺の手を取って歩いたあの帰り道。
俺を頼ってくれることがすごくうれしくて。
でもなかなか泣き止まないことに慌ててたっけ。

あの頃から俺にとって吉野は特別だったんだ。



「トリってさ、結構星とか詳しかったじゃん。俺ちゃんと覚えてるんだぜ」

「じゃあ、あれは?」


指差した先には一際輝く3つの星。


「えっと、夏の大三角形だから・・・、デネブ アルタイル ベガ?」

「正解」

「あと、あれ天の川ね」

「そりゃあ誰でもわかるだろう」

くすくす笑い合いながらまた小さな空を見上げる。

「今度さ、2人で空いっぱいの星見に行こーな」

「お前が締め切り守れるならいくらでも連れて行ってやるよ」

「・・・がんばります。へへ、なんか変な感じ」

「?何がだ」

そう言うと、シーっと人差し指を口にあてた。
なんだそのかわいい仕草は。

「ほら、雨の音。・・・この音を聞きながら星を見るって普通できないじゃん」

「そりゃあな」

「だからまるで星が空から降ってくるみたいで、おもしろいなって」

「・・・・・・」

「なんだよその顔・・・」

「いや、漫画家らしい感想だなと」

「う うっせーな!どうせお前だって、織姫と彦星は会えないだろうな、とか乙女思考なこと考えたんだろ!!」


図星である。


機嫌を悪くしたのか立ち上がろうとする吉野の手を掴み引き寄せる。
あからさまに嫌そうな顔をするが、抵抗はしないらしい。

「まぁ俺は耐えられないけどな」
「何が?」
「1年に1度しかお前に会えないなんて、狂ってしまいそうだ」
「・・・・・・俺だって、我慢 できないし」

おずおずと背中に手を回す吉野の体温を感じながらそっと目を閉じた。
星の雨の音を 感じながら。




fin

拍手[6回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
≪   七夕    ♥ HOME ♥    あつい   ≫

Copyright (c)neve All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by Pearl Box  Template by tsukika


忍者ブログ [PR]