~木佐翔太の場合~
俺は、後悔という言葉があまり好きではなかった。
過去を振り返ったって、何の意味もない。
そんなことをしていたら、今というこの時だってすぐ過去になって手から落ちてしまうじゃないか。
後ろを見るな。
前だけ見るんだ。
だってそうしないと、俺は・・・!
****
「木佐さん!!」
「っ!え・・・あ、悪い。ぼっとしていた」
先程まで台所にいた雪名がいつの間にか俺の目の前にいた。
「どうしたんですか?今日・・・なんかずっとツラそうな顔してます」
ツラい・・・か。
人から見れば、俺は楽観的で、明るい人間に見えるだろう。
でも実際は違うんだ。
こいつに出会ってから毎日が幸せで、なのに時々すごくツラくなってしまう日がある。
だってそうだろ。
俺が好きにならなきゃ雪名は普通に恋愛して、普通に結婚していたと思う。
俺なんかがいなきゃ、きっと・・・
後悔
あぁ、そうさ。
俺は後悔ばかりしている・・・弱い、人間なんだ。
「木佐さん、こっち見てください」
俺が顔を上げられずいると、そのままぎゅっと抱きしめられた。
「また、暗いこと考えてるんですか?」
「別に・・・・・」
「・・・木佐さん、俺今すっげー幸せなんです。自分のやりたいことに取り組めて、こうやって大好きな人を抱きしめられて・・・、本当に幸せすぎです。木佐さんは、違いますか?」
違うわけねーだろ。
「あぁ、俺も幸せだ」
「・・・はい!!じゃあ、そんな顔しないで笑ってください。木佐さんかわいいんですから!」
「か かわいい言うな!!」
笑う雪名にイラっときて、締め付けるぐらい思いっきり抱きしめてやった。
「ははは、痛いですよ」
「うっせぇ」
幸せだよ
俺にはもったいないぐらい、幸せだ
こんな気持ちを俺にくれてありがとう
俺と出会ってくれてありがとう
俺を好きになってくれて・・・ありがとう
俺も大好きだ
でも、ごめん
ごめんな雪名
それでも俺は、後悔し続けるかもしれない
いや・・・、しなくちゃダメなんだ
今まで俺がやってきたこと
1人の人生を狂わせてしまったこと
それはどんな言葉を並べたって、俺が背負わなきゃいけないことだから
あー・・・、もっと早くお前と出会っていたら
今とは違う考えを持てたんかな・・・?
って、これも後悔か
後悔の先は 後悔
fin
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