千秋の恥ずかしい基準はなんか違うなー、っていうお話。
いい匂いがキッチンから広がり、リビングで仕事していた吉野の手は止まってしまった。
今日は俺のリクエストで天ぷらを揚げてもらっている。ちょうどさっき見たテレビで、おいしそうな天丼屋さんを紹介してたのが原因だ。
吉野は立ち上がり見慣れたエプロン姿の羽鳥の横に立つ。
「どうどう?できそう?」
「こら、油がはねるからあまり顔を近づけるな」
「わかってるって」
海老、なす、舞茸、れんこん・・・
黄金色に次々と揚がっていく姿に盛大にお腹が鳴ってしまった。
ぐぅ~~~~
「・・・っぷ、くくく」
「わ 笑うなアホトリ!」
たくっ、仕方ないだろ。こんなおいしそうな料理が目の前にあるんだから。
つい吉野は我慢できなくなり、おずおずと羽鳥に尋ねた。
「1個だけ味見しちゃ・・・だめ?」
****
前々から思っていたが、何でこいつは人を煽るようなことばかりするんだ。
その上目使いもどこで覚えてきた。
「・・・・・・1個だけだぞ」
「やったー!」
吉野はきらきら目を輝かせながら、明らか1番大きいれんこんを指差した。
「じゃあこれ!」
「はいはい、熱いから気をつけろよ」
心配し過ぎなんだよ、と言いながら吉野はその大きなれんこんを一口で食べようとする。
・・・・入るのか?
「っ!ふぇ あふいあふいあふい!!」
「はぁぁー、だから言っただろ」
涙目でれんこんをくわえながら、吉野は手で持つべきかあたふたする。
「っ、くひはいらない・・・、あふいよー・・・」
・・・あー、ムラムラする。
この無自覚天然が。
ダメだ、意識するな。
「欲張って大きいのを取るからだろ」
「うー・・・、あ! んっんっ!!」
「?」
突然吉野はれんこんをくわえた口を俺の前に突き出した。
「はんふんあへる!」
(半分あげる!)
「・・・・・・・・・はいはい」
それだけ言うと羽鳥は吉野の頬に手を添え、顔を近づけた。半分を自分の口の中に入れ食べる。
「んっ・・・、ありがと。やっぱおいしいわ~」
「そりゃどうも」
こういう事は恥ずかしがらないんだよな・・・。
「よくこんな上手に揚げれるよなー、って・・・ははは、トリほっぺについてるし」
え、と思い頬に手を伸ばそうとするが、吉野に掴まれそのまま引き寄せられた。
ペロッ
「俺より子供じゃん」
呆然と立ち尽くす俺に目もくれず、満足したのか笑いながらリビングへ戻っていった。
そっと口に手をやり、いつもより高い体温を感じながらシンクにもたれかかった。
やばい、今絶対顔ゆるんでる。
いつも吉野が恥ずかしがってばかりだが、明らか今日は俺の負けだろう。
「トリー、腹減ったぁーー」
「・・・だったら味見だけじゃなくて少しは手伝え」
吉野に顔を見られないようシンクの方に向き直り、料理を再開した。
ーー恥ずかしい基準なんて人それぞれ
fin
今日は俺のリクエストで天ぷらを揚げてもらっている。ちょうどさっき見たテレビで、おいしそうな天丼屋さんを紹介してたのが原因だ。
吉野は立ち上がり見慣れたエプロン姿の羽鳥の横に立つ。
「どうどう?できそう?」
「こら、油がはねるからあまり顔を近づけるな」
「わかってるって」
海老、なす、舞茸、れんこん・・・
黄金色に次々と揚がっていく姿に盛大にお腹が鳴ってしまった。
ぐぅ~~~~
「・・・っぷ、くくく」
「わ 笑うなアホトリ!」
たくっ、仕方ないだろ。こんなおいしそうな料理が目の前にあるんだから。
つい吉野は我慢できなくなり、おずおずと羽鳥に尋ねた。
「1個だけ味見しちゃ・・・だめ?」
****
前々から思っていたが、何でこいつは人を煽るようなことばかりするんだ。
その上目使いもどこで覚えてきた。
「・・・・・・1個だけだぞ」
「やったー!」
吉野はきらきら目を輝かせながら、明らか1番大きいれんこんを指差した。
「じゃあこれ!」
「はいはい、熱いから気をつけろよ」
心配し過ぎなんだよ、と言いながら吉野はその大きなれんこんを一口で食べようとする。
・・・・入るのか?
「っ!ふぇ あふいあふいあふい!!」
「はぁぁー、だから言っただろ」
涙目でれんこんをくわえながら、吉野は手で持つべきかあたふたする。
「っ、くひはいらない・・・、あふいよー・・・」
・・・あー、ムラムラする。
この無自覚天然が。
ダメだ、意識するな。
「欲張って大きいのを取るからだろ」
「うー・・・、あ! んっんっ!!」
「?」
突然吉野はれんこんをくわえた口を俺の前に突き出した。
「はんふんあへる!」
(半分あげる!)
「・・・・・・・・・はいはい」
それだけ言うと羽鳥は吉野の頬に手を添え、顔を近づけた。半分を自分の口の中に入れ食べる。
「んっ・・・、ありがと。やっぱおいしいわ~」
「そりゃどうも」
こういう事は恥ずかしがらないんだよな・・・。
「よくこんな上手に揚げれるよなー、って・・・ははは、トリほっぺについてるし」
え、と思い頬に手を伸ばそうとするが、吉野に掴まれそのまま引き寄せられた。
ペロッ
「俺より子供じゃん」
呆然と立ち尽くす俺に目もくれず、満足したのか笑いながらリビングへ戻っていった。
そっと口に手をやり、いつもより高い体温を感じながらシンクにもたれかかった。
やばい、今絶対顔ゆるんでる。
いつも吉野が恥ずかしがってばかりだが、明らか今日は俺の負けだろう。
「トリー、腹減ったぁーー」
「・・・だったら味見だけじゃなくて少しは手伝え」
吉野に顔を見られないようシンクの方に向き直り、料理を再開した。
ーー恥ずかしい基準なんて人それぞれ
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