律っちゃんとソラ太がお留守番するお話。
「か……かわいい」
小野寺は顔を赤く染めて思わず呟いてしまった。
「ならよかった」
玄関の壁に寄りかかりながら高野は小さく呟く。
「そういうことだから、少しの間だけ頼んでいいか？」
「はーい………..い？いやいやいや、
思わず立ち上がり小野寺は叫んだ。
めんどうくさそうに顔をしかめる高野に、
「どうせ話したところで、
「それは…….まぁ」
高野はため息をつきながらしゃがみこむと、足元にいた『それ』
「だから、
『にゃーー』
まるで返事をしたように、ソラ太と呼ばれた猫は鳴いた。
＊＊＊＊
「………..」
距離は推定３ｍ。
何も考えていないような大きなあくびとともに、
………ど…どうすればいいんですかあああああああ！！？？
なぜか床で正座をしている小野寺は心の中で盛大に叫んでいた。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。せっかくの休日、
なぜか今は高野さんの家に……。
「あああああああああああああああ！！！」
ビクッ！！！
思わず出てしまった声に驚いたのかソラ太がハッと顔を上げた。
「あ………ごめんね、せっかく寝ていたのに…」
眠そうなソラ太はもうひとあくびすると、
「……….はぁーーー」
そもそも、
動物自体は大好きなのに、
というか猫相手に正座している今のこの状況って相当変な気が……
………帰りたい。
マイナス思考モードに入りかけていると、ふと視線に気付く。
顔を上げると寝ていたはずのソラ太がこっちを見ていた。
「え……….、あの」
やばいめっちゃ見られている。
どうしてだ、俺なんかしたか？
いやいやいや、マイナスに考えすぎだ。
こうやって猫と２人きりになれるチャンスなんてめったにないんだ
どうにかがんばってお近づきになるんだ。がんばれ俺！
「えっと……………..ソラ太….さん？」
なぜ「さん」付けにした俺。
「そっちに行っても…….いいかな？」
自分の声がひどく大きく聞こえる中、
ゆっくりソファに近づき、
隣に座ったはいいがここからどうしよう…..。
横目で見るとソラ太がこてんっと首をかしげてきた。
…….でも、この猫があの時嵯峨先輩が拾った子なんだよな。
あの頃は確かほんと子猫で。
この子が成長したように、
「……..高野さんね、君のご主人。
そう言うと、
『にゃー』
やっぱりこちらの言っていることがわかっているのかもしれない。
まるで心が通じたみたいだと思いながら、
「ありがと」
返事をしてくれたソラ太の頭をそっと撫でると、
＊＊＊＊
「ただいまー」
高野は疲れたように肩をまわしながら玄関に入ってきた。
ちょうど遠方から来ていた作家に呼び出され、
無理やり小野寺にソラ太を頼んでしまったが大丈夫だっただろうか
世話をしてくれなんて家に小野寺を呼びたかった、
きっとまた小言を言われるんだろうな。
靴を脱ぎ廊下を歩いていき、リビングの扉を開ける。
「小野寺、悪かったな。大丈夫だった……….か…..」
自分が想像していたのとは打って変わって、
……..心配なかったみたいだな。
ぐっすり眠ってる小野寺に気付かれないよう、そっと近づく。
小野寺の前髪を撫でると、
「悪いソラ太、起こしちまったな」
『にゃー』
お帰り、と言っているかのごとくソラ太が鳴いた。
「小野寺と仲良くしてくれたみたいだな、ありがと」
『にゃー！』
ゴロゴロと喉を鳴らすソラ太の頭を撫で、
小野寺の寝顔を見ていると今日の疲れなんてどこかにいってしまい
うとうとしてきた頭に逆らわず、自分もゆっくり目を閉じた。
「......おやすみ、律」
ゴロゴロと喉を鳴らすソラ太の頭を撫で、
小野寺の寝顔を見ていると今日の疲れなんてどこかにいってしまい
うとうとしてきた頭に逆らわず、自分もゆっくり目を閉じた。
「......おやすみ、律」
「おやすみなさい、高野さん」
fin
[31回]
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