side高野
思ったより広い図書館だ。
そう思いながら高野はのんびり館内を歩いていた。
だが先程から奇妙な感覚がつきまとっている。 景色が変に重なるというか、記憶がざわつく。
「ここ・・・昔来たか?」
ハッキリは思い出せないが、 どこか懐かしい気持ちはそこから来ているのだろう。
ふらっと足に任せ歩き始めめた。
・・・・・そう、確か高校の頃。
近くに来たから寄って、本を読んだ。人が少なく静かで。奥の方・ ・・本棚に囲まれた所でよくしゃがんで読んでたんだ。
「ここか?」
窓の光が差し込むこの場所は絶好な読書場所だった。
高野は本を見上げるようにしゃがみこんだ。
そう・・・この感じ。
落ち着く・・・・・・。
最近はこうやって図書館でゆっくりすることなんて無かった。 昔は放課後とか学校の図書館にずっといたのにな・・・。
『好きです・・・』
・・・今思うと、無意識に避けていたのかもしれない。 あそこは思い出が多すぎる。
「ま、今となっては過去のことさ」
小野寺と再会して、 俺にはやっぱりあいつじゃなきゃだめなんだってわかった。 失った時間は長いけど、思い出なんてまたたくさん作ればいい。
「そういや、あいつよく偽名で学校の本借りれたよな」
織田律。
前々から貸し出しカードを見て知っていた名前。 結局はバレないようにするため?にとった行動らしいが、 こっちは何年も勘違いをしてたんだ。
あいつがいなくなった後も、 何回も貸し出しカードを見て確認した。
それしか、繋がりが無かったんだ。
だからあの時間を、小野寺と一緒にいた証って無いんだよな・・・ 。写真でも撮ればよかった。いや、柄じゃないか。
上を見ながらぼーっとすると、 真っ赤な厚い背表紙の本が視界に入った。 惹かれるように立ち上がり手に取る。
「古そうだな・・・」
少し日に焼けたページをめくり文字を追った。
・・・・・この話。
そうだ。これだ。
俺は昔ここに来て、この小説を読んだんだ。
ぱらぱらとめくっていき、1番後ろのページへ。
「うわ、今どき貸し出しカードかよ。ボロボロじゃねー・・・・・ か・・・・・・・・っっ!!」
嵯峨政宗
小野寺律
なんで。
なんで今更こんなところに。
あんなに探しても、出てこなかったじゃねーか。
ーーそれでも。
「あったんだ・・・。繋がって・・・っ・・・・・たんだ」
何度も何度も疑った。
あの時間も、想いも、幻かもしれないって。
疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って 、でも・・・目をつむるとそこにいるんだ。
律が、笑っているんだよ・・・・・・!
高野の目から一粒だけ涙が落ちる。
その存在を確かめるように、本をぎゅっと胸で抱きしめた。
つづく
そう思いながら高野はのんびり館内を歩いていた。
だが先程から奇妙な感覚がつきまとっている。
「ここ・・・昔来たか?」
ハッキリは思い出せないが、
ふらっと足に任せ歩き始めめた。
・・・・・そう、確か高校の頃。
近くに来たから寄って、本を読んだ。人が少なく静かで。奥の方・
「ここか?」
窓の光が差し込むこの場所は絶好な読書場所だった。
高野は本を見上げるようにしゃがみこんだ。
そう・・・この感じ。
落ち着く・・・・・・。
最近はこうやって図書館でゆっくりすることなんて無かった。
『好きです・・・』
・・・今思うと、無意識に避けていたのかもしれない。
「ま、今となっては過去のことさ」
小野寺と再会して、
「そういや、あいつよく偽名で学校の本借りれたよな」
織田律。
前々から貸し出しカードを見て知っていた名前。
あいつがいなくなった後も、
それしか、繋がりが無かったんだ。
だからあの時間を、小野寺と一緒にいた証って無いんだよな・・・
上を見ながらぼーっとすると、
「古そうだな・・・」
少し日に焼けたページをめくり文字を追った。
・・・・・この話。
そうだ。これだ。
俺は昔ここに来て、この小説を読んだんだ。
ぱらぱらとめくっていき、1番後ろのページへ。
「うわ、今どき貸し出しカードかよ。ボロボロじゃねー・・・・・
嵯峨政宗
小野寺律
なんで。
なんで今更こんなところに。
あんなに探しても、出てこなかったじゃねーか。
ーーそれでも。
「あったんだ・・・。繋がって・・・っ・・・・・たんだ」
何度も何度も疑った。
あの時間も、想いも、幻かもしれないって。
疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って疑って
律が、笑っているんだよ・・・・・・!
高野の目から一粒だけ涙が落ちる。
その存在を確かめるように、本をぎゅっと胸で抱きしめた。
つづく
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