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世界一初恋にどっぷりハマッてる二次創作サイトです。
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2巻の遊園地マンガの捏造です。
横澤さんが少しだけ桜さんと話すお話。


最近俺の日常が変わっていると思うときがある。
今までなら遅くまで仕事をし、疲れて家に帰っても迎えてくれるのは1匹の猫だけ。別にそれが当たり前のことで、何も感じはしなかった。

「おかえり、横澤のお兄ちゃん!」
「今日は遅かったなー」

これが今の俺の日常。
あの夜から始まったこの生活は、最初は馴れなくて素直になれなかった。
でも今では自分でも驚くぐらい肩の力が抜けている。
俺にはもったいないぐらいのこの幸せをずっと感じられたら。
それはきっと。
夢のような日々なんだろう。



「横澤!」



「っ!?・・・あ、悪い。何だっけ?」
「ひよがメリーゴーランド乗りたいって言うからちょっと行ってくるな。疲れたならそこ座って待ってろ」
「あぁ・・・」
そう言って近くのベンチを指すと、ひよの後を追いかけるように歩いていった。

そうだ、今日は桐嶋親子と遊園地に来ていたんだ。
遊園地なんて本当に久しぶりで、この2人に出会わなかったら来る機会なんてずっとなんて無かっただろう。

前を見るとひよがメリーゴーランドの馬に乗ろうとしていた。それを桐嶋さんはカメラを用意し柵に寄りかかる。
「準備万端だな・・・」
明るい音楽が流れだし、きらびやかな光とともに廻り始めた。
俺には似合わないなと苦笑しながら楽しそうに辺りを見ているひよと目が合う。
「お兄ちゃーん!」
笑顔で手を振ってくるその姿に、心から幸せな気持ちになれる。
自分も手を振り返すと、桐嶋さんがいじけたようにひよに叫んだ。
「お父さんにはー?」
「パ・・・お父さんはいいの!」
ガクッと肩を落とした寂しそうな背中に、心の中でつい笑ってしまう。
これじゃあほんとただの・・・


『親ばかですよね』


「え・・・」
気付かなかった。
いつの間にか隣に知らない女性が座っていた。
白い肌に白いワンピース。髪は長く、そのせいかは分からないがなぜか顔がよく見えなかった。
『でもとても仲の良さそうな親子ですね』
花が咲いたようにどこか甘い香りが漂った。
「そう・・・ですね。・・・・・自分だって仕事が大変なはずなの娘のために毎日がんばって、理想の父親だと思います」
仕事仲間としても理想の人だ。
「・・・・・・あ、すいません。勝手に話して」
こんな風に人に本音を言ってしまうなんて、やはり今日の俺は疲れているのだろうか。
とりあえず謝ると女性はすっと立ち上がりこちらを振り返った。
『出会った人があなたみたいな人でよかった』
そう言って綺麗に笑った。
「?・・・どういう」

『これからもあの2人を・・・よろしくお願いします』

深く頭を下げたその姿は、まばたきと同時にいつの間にか消えていた。
「え・・・・・・あ・・・」
今のは、何だったんだ・・・?
呆然としていると乗り終わった2人がこちらに戻ってきた。
何もない所をずっと見ている横澤に、桐嶋は首を傾げた。
「どうしたんだ横澤、真っ青な顔して」
「いや・・・今、女の人が」
「・・・女?」
明らか不機嫌そうな顔をされたが、そんなの気にしていられる余裕は無い。
本当にあの人は誰だったのだろうか。それに、2人をよろしく、って。
「横澤のお兄ちゃん・・・大丈夫?」
具合が悪いと思ったのだろう。ひよが覗き込むように心配そうな表情をみせた。
確かにあの人も気になるが、せっかくの遊園地なんだ。これじゃあひよにも失礼だな。
「ごめんな、ちょっと疲れただけだよ」
「うん」
これ以上心配をかけまいと立ち上がった、ーーその時だった。


ブワッ


強い突風が吹き木々が激しく揺れた。あまりの風に目を閉じていると、ひよのうれしそうな声が耳に入る。
「わぁーー!!パパ、横澤のお兄ちゃん見てみて!お花すごーい!!」

花?

うっすら目を開けていくと、桃色の空。
一面風で飛ばされた桜の花びらで埋め尽くされていた。空高く舞い上がった花びらは太陽の光を吸い込み、キラキラと輝いていた。
「おー、これぞ 花吹雪 だな。・・・・・・・・・・えっ」
つい見入っていると、空を見ていた桐島さんがいつの間にか視線を変えていた。ベンチの後ろの山になっている位置、それは一際立派な桜の木に向けられていた。
「どうしたんだ、桐島さん?」
「いや、今・・・誰かが手を振っていた気がして・・・・・・。はは、気のせいか」
もしかして・・・。
「気のせいじゃ無い・・・と思う」
「え?」
「手を振り返してやったらどうだ」
「そう か・・・、そうだな」
桐嶋は胸の位置ぐらいまで軽く手を上げ手を振った。なぜかはわからないが、あの人の姿が思いついたから。
「・・・・・よし!ひよ次はパパとジェットコースター乗ろうな」
「うん!・・・ん、違う。お父さんだよ!」
恥ずかしそうに駆け足で走っていってしまった。
「さっきはパパって言ったのに・・・。ほら横澤も行くぞ」
「あぁ」
もう1度ベンチを振り返り、ひよの後を追う。

思い出した。

さっきあの女の人が現れた時の甘い香り・・・。

今俺たちを包み込む



桜の香りだった。





fin

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